ある程度ビジネス英会話が出来る人でも悩むことが多いのが「世間話」です。
例えば海外出張でビジネスの相手と初めて会った時。
「Nice too meet you!」
と言ってから、いきなりビジネスの本題に入ることはまずないでしょう。
会話の相手が初対面の人ではなく、顔見知りの場合はなおさら。
「Good to see you again!」
と言ってから、まずは世間話をするのが通例です。
本題に入る前にする世間話、どうでもいい話のことを英語で「small talk」といいますが、実はSmall talkで何を話したらよいのかはネイティブでも悩んでいるんですね。

そこで今回は、ビジネス英語における「Small talk」では、何を話せばいいのか??について、私の経験からヒントをお送りいたします。
目次
Small Talkの王道「F.O.R.M」とは?
ネイティブも頭を悩ませているsmall talkですが、当たり障りのない話題をするのが王道とされています。
ところがsmall talkは受け取る人によっては、当たり障りがなさすぎて、気持ちがこもっていない印象(insincere)を与えることがあります。
本当は興味がないのに、興味があるふりをした会話と思われる可能性があるので少し工夫が必要です。
話しかけられる人が、「自分の時間を無駄に使われた」と感じたり、「だから結局何なの?そんなつまらない内容ならほっといて欲しかったよ。」という怪訝なレスポンスを引き出さないように、その場しのぎではなく、お互い会話をしてプラスになったと実感する会話を目指す必要があります。

ところで、英語での世間話について「天気の話題がふさわしい」と聞いたことがありませんか?
実のところ、インターネット上で英語で「small talk」と検索してみると、日本人がよいと信じている「天気についての会話は、small talkとしてふさわしい」という英語記事が結構たくさんみつかります。
理由としてはやはり天気の話題は当たり障りがないから、と書いてありますね。

私は英語ネイティブである主人の仕事の都合でオーストラリアで活躍する一流アスリートや俳優、実業家、医者、大会社のCEOや優秀なバッヂ組に多数お目にかかりましたが、彼らが天気の話をすることはまずありません。
おそらく直接に顔を合わす機会を作ってまで「当たり障りのない」会話に無駄な時間を費やす意味がないからでしょう。
ただし、データの交換という観点から、天気の話題が重宝されることはあります。ビジネス上、風の強さや、気温、降雨量についてのデータが必要とされる場合は話題として「あり」かもしれません。(まれだとは思いますが...。)
では、Small talkでは何を話題にすればよいのでしょうか??
ビジネスの現場で商談以外の会話をする理由は、関係を深めるためです。

F.O.R.MはFamily(家族) Occupation (仕事)Recreation(気晴らし) Money(お金)の頭文字を合わせた言葉です。
なぜ、F.O.R.MはSmall talkに最適なのかと言いますと、これらは相手が最も抵抗なく話せる話題だからです。
よく女性は自分の話をするのが好き、といいますが、男性でも女性でも、人間は誰もが自分自身について語ることが大好きです。
ですから、F.O.R.Mの話題を使って相手に質問すると、相手も喜んで喋ってくれることが多いです。
相手が喋りだしたらそれについてまた質問を返します。
あっという間にSmall talkの完成です。
ちなみにMについてMessageやMotivationといった解釈を示す人もいます。そのあたりはご自身の会話のスタイルや興味に合わせて選ぶと良いでしょう。
F.O.R.Mの話題、具体例を伝授!
ビジネス英語での世間話(Small talk)に欠かせないF.O.R.Mですが、具体的にどんなことを話せばいいのかを見てみましょう。
F.O.R.Mを利用すると、ネタ切れすることなく質問を作り出せるのでとても便利です。
質問は、文章にするととてもシンプルですが、相手が質問に答え出すと会話がどんどん弾むので、ついつい引き込まれてしまいます。
Family(家族)についての話題
Family(家族)についてであれば、
ポイント
- 子供がいるのか
- 何人子供がいるのか
- 子供は男の子か女の子か
- 両親と住んでいるのか
- 兄弟姉妹がいるのか
- どこでパートナーと出会ったのか
といった質問が話しやすいと思います。
Occupation(仕事)についての話題
これからビジネスの話をしようとしていますので、Occupation(仕事)のことは話題にしやすいと思います。
ポイント
- どうして、あるいはどうやってその職業(profession)を選んだのか
- 仕事でやりがいを感じることは
- 仕事をしていて大変だと感じることは
といった質問が思い浮かびます。
Recreation(気晴らし・趣味)についての話題
Recreation(気晴らし)は、趣味や道楽と言い換えることができます。
ポイント
- 余暇に何をしているのか
- どんな食べ物が好きなのか
- ストレス発散のためにしていることは
Money(お金)についての話題
Money(お金)については、英語圏でもちょっとセンシティブな話題になりますので、少し関係が温まってきたら切り出すと良いでしょう。
ちなみに、どんなに仲良くなってもさすがにNGな質問は
- いくら稼いでいるの?
ですね。これは、プライベートな部分に首を突っ込みすぎで、嫌がられます。
無難な話題としては、
ポイント
- みんな誰でもお金が必要
- でもみんな誰でも十分お金を持っているわけではない
- 教育資金・老後の資金が心配
という共通認識から会話を切り出すことですね。
もし相手が桁違いのお金持ちだったりしますとMoneyは話題として盛り上がりに欠けるでしょうから、あまりふさわしくないかもしれません。
お金に関する話題はなかなか難しいですが、誰もがみな興味があることは間違いありません。ビジネスの内容によってふさわしい質問になるよう、いろいろ工夫なさってみてください。
そういえば、私たちとお付き合いの長い会計士が以前、
「娘夫婦が投資物件を購入してリノベーションをする間、我が家に居候するんだ、お金を節約したいんだね」
「娘婿が資格を取って、転職したんだ」
という話をしていましたね。
私たちの生活はお金の話と切っても切れない関係がありますので、意識しながら観察してみると会話の中にお金の話題がよく出てくることに気がつきます。
ちなみに、Mについてですが、Moneyの代わりにMessageやMotivationを使う人もいるようです。
F.O.R.M以外にウケる話題
さてF.O.R.Mの他に、忘れてはいけない話題といえば、Sportsです。
私はオーストラリアに住んでいますので、少しオーストラリアのスポーツ事情についてお話しします。
オーストラリアで国民的人気のスポーツといえば、Australian rules footballです。
日本ではまるで知名度はありませんが、サッカーとラグビーが混ざったような、オーストラリア方式のフットボールです。
一般的には、Australian football、Aussie rules、football、footyと呼ばれていて、こんな感じのスポーツです。
人気ぶりを象徴するのが、AFL Grand Final Fridayという「祝日」がヴィクトリア州には存在することです。
AFLとは18のチームから構成されるAustralian Football Leagueというプロのリーグで、その最終決戦日は祝日です(2019年現在)。
その祝日に、ヴィクトリア州の州都であるメルボルンのCBD(The Central Business District )から、フットボールファンには聖地のMCG(Melbourne Cricket Ground)まで、パレードが行われます。
このMCGスタジアムはその名前の通り、クリケットも行われます。クリケットもファンが多いですが、フットボールの驚異的な熱気には遠く及びません。
家族が以前にMCGのVIPルームで接客をしていましたが、VIPルームに観戦に来ていたVIP達は飲んだくれていたそうです。
このフットボールは経営者の間では、もちろん接待にも使われますし、従業員に福利厚生的な意味合いでチケットを配ることもあります。
オーストラリアでヨーロッパ系のオーストラリア人とビジネスで関わるのであれば、ぜひこのフットボールについて勉強なさってみてください。
オーストラリアでスポーツの話題をするとき、
ポイント
- フットボールはどこのチームを応援しているのか
- グランドファイナルをMCGで観戦したことはあるのか
こんな質問をしてみると、興奮の渦に巻き込まれる可能性大です。
先にお話ししました私たちの会計士も普段は穏やかな笑みをたたえたジェントルマンですが、フットボールの話をしだすと一気にヒートアップして別人のようになります。
ちなみにアジア系、アフリカ系、インド系の人はフットボールに関してほぼ無関心です。
スポーツの話題でもう一つ欠かせないのはテニスですね。
テニスの世界四大選手権の全豪オープン選手権がメルボルンで行われます。
場所はMCGに隣接したMelbourne Parkという場所ですが、VIP席ももちろんありますし、接待でもよく使用されています。
日本人では錦織圭選手が有名ですが、そのほかにもテニスの有名選手を事前に調べておくと、うまく会話が弾むかもしれませんよ。
質問をする=相手に興味がある証
英語圏で「相手に質問をする」ことは「あなたに興味を持っていますよ」という暗示(implication)です。
質問を通じて、「あなたへ敬意を払っていますよ」とデモンストレーションしているともいえます。
ここでいう質問するとは、日本的な「根掘り葉掘り詮索する」とはちょっと意味合いが違っています。

オーストラリア英語でそのような詮索好きな人をstickybeakといいますが、プライベートであれ、仕事上であれstickybeakな人はあまり好かれませんね。
社会的に地位のある人同士の会話ならなおさらビジネスマナーをわきまえて、利害関係について調整することが求められていますので、stickybeakは基本的にいません。興味がなかったら、時間の無駄なので話をしません。
もしあなたから話しかけないと、あなたは相手に興味がないと思われる可能性大ですので、不安があれば、質問を準備をして会話に備えましょう。
逆にあなたが質問を受けたら、出だしは上々ですので、あなたからも準備をした質問で応戦してみましょう。
また実際に上記のF.O.R.Mにのっとって会話をしていくと、質問した相手が自分自身について語っている内容に、あなたも驚くほど引き込まれていくことを実感するはずです。
私たちはみんな、自分について語ることが大好きで、特殊なポジティブなエネルギーを知らず知らずのうちに振りまいているのです。
Small talk~私の場合~
さて英語圏で仕事をしている私自身はどうするかについてです。
私のSmall talkの傾向として、会話はまずお世辞(compliment)から入ります。
日本語の「お世辞」には、嫌味を伴うような印象や、嘘をついておべんちゃらをいうという意味があるかもしれませんが、英語のcomplimentに価値を貶めるような意味はありません。
私がcomplimentを使うのは、相手に対する興味を、私の中で最大に引き出すためです。
一番最初にお目にかかったときに、最も印象に残る(impressive)こと、例えば相手のファッションや態度を含めたプレゼンテーションについて、どれだけ魅力的かについてほめます。
具体的には、gorgeous(見事で素晴らしい) stunning (かっこよく素敵な)glamourous (魅力的な)gracious(親切で慈愛に満ちた) graceful (優美で上品な)などを使います。
私は明らかに日本人なので、上手に会話を進めなくてはいけないという意識よりは、相手からいかに良い刺激を受けたか、私の興奮度が相手に伝わればまずはOKという考え方です。
そういった言葉を使うと私自身も自然に気持ちが高揚して幸せな気分(uplifted)になるので、相手にも私のハッピー度が伝わってとても良いのです。